爆発成形は、爆薬の爆発によって生じる衝撃圧力を利用し、金属板を瞬間的に大きく変形させる加工技術です。およそ半世紀前には、航空宇宙分野において、大型で複雑な曲面を持つ部品の成形に利用されていました。通常のプレス加工では大型の金型や大規模な加工設備を必要とする形状でも、爆発エネルギーを利用することで成形できることが特長です。
YouTube動画は、爆発成形の一例です。あらかじめ複数の金属板を溶接し、おおよその球形に組み立てた金属容器の内部を水で満たします。その水中で爆薬を爆発させると、発生した水中衝撃波が容器の内面に作用し、金属板を外側へ高速で変形させます。水を介して圧力が容器全体に伝わることで、溶接による凹凸や形状のばらつきが整えられ、滑らかで真球に近い金属ボールが形成されます。
型を用いる爆発成形

通常のプレス成形では、対となる上型と下型の間に金属板を挟み、圧力を加えて成形します。これに対して爆発成形では、数値解析のアニメーションが示すように、水中衝撃波による圧力が金属板の表面に作用し、上型の役割を果たします。
また、爆発成形では、プラスチックや紙などの比較的軟らかい材料も型として利用できます。熊本大学の表札は、この特徴を生かして製作したものです。手書きの原版をデジタル化し、その輪郭に沿って文字部分を切り抜いたカッティングマットを下型として使用しました。この型の上に銅薄板を重ね、水中衝撃波を作用させると、銅板が文字形状の凹部へ高速で押し込まれます。その結果、下型の文字形状が銅板に転写され、凹凸を持つ表札が形成されます。
笹の葉を型に用いたマイクロスケール成形

爆発成形は長い歴史を持つ加工技術ですが、これまでは主に大型部材の成形に用いられてきました。そのため、どこまで微細な形状を転写できるのかについては、ほとんど注目されていませんでした。
イネ科植物の葉の表面には微細な突起があり、表面のワックス成分とともに撥水性に寄与しています。図に示すように笹の葉の表面をレーザー顕微鏡で観察したところ、数マイクロメートル程度の突起が実際に存在することが確認されました。そこで、笹の葉を天然の型として、その上にアルミ箔を重ね、水中衝撃波によって圧縮しました。成形後のアルミ箔には、笹の葉の突起に対応する微細なくぼみが形成されていました。この結果から、爆発成形によって、自然界に存在するマイクロスケールの表面構造も転写できることが分かりました[1]。
[1] S. Tanaka, D. Inao, I. Bataev, A. Kubota, and K. Hokamoto, “Ultralarge-area shock imprinting using underwater shock wave and natural leaf mold,” Manufacturing Letters, Vol. 27, pp. 8–12, 2021. DOI: 10.1016/j.mfglet.2020.11.004.
樹脂スタンパーを用いた金属板表面への微細構造転写

爆発成形の特徴の一つは、比較的軟らかい材料も型として利用できることです。光ディスク(DVD)はポリカーボネートでできており、その表面にはサブマイクロメートルスケールの微細な周期構造が形成されています。
これまでに、DVDを下型としてアルミ箔を重ね、水中衝撃波によって圧縮するインプリント実験を行いました。型が軟らかい樹脂であるにもかかわらず、アルミ箔にはDVD表面の溝の約90%に相当する深さの溝が形成されました。また、爆薬の形状や配置を工夫することで、大面積への微細構造転写も実証しています[2, 3]。
一方、従来の爆発成形では、固定した下型に金属試料を押し付けて成形するため、試料は薄板に限られ、微細構造の転写では主に金属箔が用いられていました。
その後、樹脂材料の動的変形挙動を調べる中で、樹脂は衝撃によって大きく変形しても、金属のような塑性変形をほとんど残さず、元の形状へ回復することが分かってきました[4]。そこで、従来は下型として固定していた樹脂モールドを、金属板(アルミ 5 mm thick)へ押し付けるスタンパーとして利用する方法を考案しました。樹脂スタンパーを水中衝撃波によって動的に圧縮し、金属板の表面へ押し付けることで、金属箔だけでなく、より厚い板材にもサブマイクロメートルスケールの微細構造を転写できることを示しています[5]。
[2] S. Tanaka, K. Hasegawa, I. Bataev, A. Kubota, and K. Hokamoto, “Sub-micrometer and nanoscale imprinting on large-area foils using high-pressure underwater shock waves,” Materials & Design, Vol. 198, Article 109341, 2021. DOI: 10.1016/j.matdes.2020.109341.
[3] K. Hasegawa, S. Tanaka, I. Bataev, D. Inao, M. Nishi, A. Kubota, and K. Hokamoto, “One-dimensional nanoimprinting using linear explosives,” Materials & Design, Vol. 203, Article 109607, 2021. DOI: 10.1016/j.matdes.2021.109607.
[4] K. Hasegawa, S. Tanaka, I. Bataev, D. Inao, M. Nishi, A. Kubota, and K. Hokamoto, “Toward a Better Understanding of Shock Imprinting with Polymer Molds Using a Combination of Numerical Analysis and Experimental Research,” Materials, Vol. 15, No. 5, Article 1727, 2022. DOI: 10.3390/ma15051727.
[5] K. Hasegawa, S. Tanaka, D. Inao, M. Nishi, A. Kubota, and K. Hokamoto, “Dynamic compression of a polymer stamper using high-impulse underwater shock waves to imprint a sub-micrometer structure on a metal plate surface,” Journal of Materials Research and Technology, Vol. 24, pp. 6730–6738, 2023. DOI: 10.1016/j.jmrt.2023.04.248.
数値解析で明らかになった転写メカニズム
アニメーションは、スーパーコンピューターを用いた数値解析によって、樹脂スタンパーの微細構造がアルミ板へ転写される過程を再現したものです。赤色はポリカーボネート、青色は金属反射膜で、この二つがスタンパーを構成しています。緑色は加工対象となるアルミ板です。
水中衝撃波が作用すると、スタンパー全体がアルミ板へ強く押し付けられます。このとき、ポリカーボネートの凸部はいったん圧縮され、アルミ板の表面も塑性変形します。
その後、スタンパー内部で応力波が繰り返し反射する過程で、凸部に作用する圧縮応力が一時的に低下します。このとき、圧縮されたポリカーボネートが元の体積に戻ろうとして凸部が回復し、アルミ板を再び押し込みます。アニメーションでは、この圧縮と回復が繰り返されることで、アルミ板の中央部が段階的に押し下げられ、周辺が盛り上がりながら、スタンパーの形状が徐々に転写される様子が確認できます。
レーザー衝撃波の作用時間が短いのに対し、水中衝撃波は比較的長い時間にわたってスタンパーをアルミ板へ押し付け続けます。この持続的な押付けの間に、スタンパーの凸部がアルミ板を繰り返し押し込むことが、微細構造の転写を可能にする重要な要因です。
