救助用ブリーチングとは

救助用ブリーチングとは、倒壊した構造物内に取り残された要救助者へアクセスするため、鉄筋コンクリートの壁や床に救助用の開口部を設ける技術です。重機が進入できない狭隘な災害現場では、手工具による作業が中心となるため、開口部の形成に多くの時間と労力を要します。

本研究では、少量のニトロメタンを複数の装薬孔に分散して配置し、同時に爆燃させることで、装薬孔間に亀裂を進展させ、破断面を形成する小型の災害救助用制御破壊デバイスを開発しています。本デバイスは、壁や床を一度に除去するものではなく、装薬孔間に破断面を形成することで、その後の手工具や削岩機による破砕・除去作業を容易にします。これにより、開口作業の迅速化と救助隊員の身体的負担の軽減を図ります。

動画では、厚さ120 mmの鉄筋コンクリート床に、一辺約90 cmの三角形状の救助用開口を形成するまでの一連の作業工程を示しています。穿孔、デバイスの設置、防爆シートの設置、デバイスの作動、削岩機による破砕・除去を行い、作業開始から30分未満で救助用開口を形成しました。

現在は消防救助隊との連携を開始しており、3年以内の実用化を目指しています。

同時作動によって破断面を選択的に形成する原理

多量の爆発性物質を使用すれば、鉄筋コンクリートを大きく破壊できます。しかし、開口予定範囲の外側まで損傷が広がり、壊す必要のない部分の破壊やコンクリート片の飛散を引き起こすおそれがあります。一方、使用量を少なくすると、周囲への影響は抑えられますが、コンクリートを十分に破壊できません。

私たちの過去の研究では、二つのニトロメタン装薬を同時に爆燃させることで、装薬孔間に破断面を形成できることが分かりました[1]。本研究では、この同時作動の原理を複数の装薬孔に適用し、目的とする範囲に破断面を形成します。

ニトロメタンの爆燃誘発には、自動車用エアバッグにおいて、通電により作動してガス発生剤を着火するイニシエータを使用しています。イニシエータは作動時間のばらつきが極めて小さく、同時に通電した際の作動時間差は3マイクロ秒以内です。本研究で開発したデバイスは、このイニシエータとニトロメタン装薬を組み合わせたものであり、複数のニトロメタン装薬を高い時間精度でほぼ同時に爆燃させることができます。

装薬孔間隔とコンクリート中の応力波の伝播速度を考えると、3マイクロ秒の作動時間差は十分に小さく、各装薬孔から伝わる応力波は装薬孔間でほぼ同時に重なり合います。その結果、装薬孔間に引張応力が集中して亀裂が発生し、孔内のガス圧によって亀裂が進展することで、装薬孔を結ぶ破断面が形成されます。

数値解析のアニメーションは、複数のニトロメタン装薬を同時に爆燃させたときの亀裂の発生と進展を示しています。亀裂が装薬孔間と装薬孔に囲まれた領域に集中しており、同時作動によって破断面が選択的に形成される過程を確認できます。

[1] Tanaka S., Nishi M., Yamaguchi M., Bataev I., Hokamoto K., Simultaneous Initiation of Nitromethane in Two Holes by Pulsed Wire Discharge for Crack Control of a Concrete Block, Journal of Dynamic Behavior of Materials, Vol. 6, No. 1, pp. 53–63, 2020. DOI: 10.1007/s40870-019-00227-6

報道動画

本研究は、熊本県民テレビで取り上げられました。動画では、開発した災害救助用制御破壊デバイスの概要と、消防救助隊の訓練において本デバイスが使用された様子が報道されています。

厚さ300 mmの鉄筋コンクリート部材の制御破断

本デバイスは、救助用開口の形成に用いた部材よりも、さらに厚い鉄筋コンクリート部材にも適用できます。動画では、厚さ300 mmの鉄筋コンクリート部材を破断した際の状況を示しています。デバイスの配置や作動条件を適切に設定することで、厚い部材に破断面を形成し、条件によっては内部の鉄筋まで破断することが可能です。

都市部の小規模構造物や狭隘な現場では、大型重機の搬入が困難です。本技術は、このような場所で小型重機による部分解体を支援する技術としても活用できます。